Interview
【自治体×消防団DX】消防団員専用アプリ「S.A.F.E」を活用した、小野町の“新時代”の防災訓練/情報整備局
2023.01.30
情報整備局が開発した、消防団専用・防災アシストアプリ「S.A.F.E」。
このアプリは火災現場や水利位置情報の可視化、消防団員全員への火災通知、団員の出動状況を共有する機能が搭載されており、総務省のICT地域活性化大賞2020で大賞を受賞し、経産省の地域デジタルイノベーション推進事業2022に採択されている。
S.A.F.E導入は多くの自治体で検討が進んでおり、人口減少による消防団員の担い手不足や、アナログな連絡手段で即座に消化活動ができないといった課題を解決する。福島県小野町もS.A.F.Eを導入した自治体の一つ。今回は、小野町で開催されたS.A.F.Eを活用した図上での防災訓練を紹介する。
Speaker
情報整備局 代表 和田晃司氏
情報整備局 エンジニア 斎藤浩平氏
小野町役場 町民生活課 消防担当 吉田雅俊氏
情報整備局 代表 和田晃司氏
情報整備局 エンジニア 斎藤浩平氏
小野町役場 町民生活課 消防担当 吉田雅俊氏
消防団員が後悔しないために「S.A.F.E」を開発
- 消防団専用のアプリ「S.A.F.E」はどんな課題から生まれたのでしょうか?
斎藤
東日本大震災を経験し、消防団員としての無力さを感じたのがきっかけです。震災は3月の午後に起きましたが、仮に多くの家が暖房器具を使う夜や朝の時間帯に起きていたら、同時多発的に火災が起きていたと思うんですね。
そうなると消防士だけでは対処できないから消防団も出動するのですが、問題は地元以外の消火栓の位置がわからないこと。つまり、活動したくてもできないんです。この状態を情けなく思い、今後有事の際に後悔しないような仕組みを作らないといけないという使命感を抱きました。
東日本大震災を経験し、消防団員としての無力さを感じたのがきっかけです。震災は3月の午後に起きましたが、仮に多くの家が暖房器具を使う夜や朝の時間帯に起きていたら、同時多発的に火災が起きていたと思うんですね。
そうなると消防士だけでは対処できないから消防団も出動するのですが、問題は地元以外の消火栓の位置がわからないこと。つまり、活動したくてもできないんです。この状態を情けなく思い、今後有事の際に後悔しないような仕組みを作らないといけないという使命感を抱きました。
和田
大災害だけでなく、地元の火災に気づけなかったという苦い経験もS.A.F.E開発のきっかけの一つです。消防団員は、火災が起きると防災無線や消防車のサイレンで気づくか、電話やメールなど人づての連絡で把握するほかなく、地元の火災でも気づけないことがよくあります。
このままの体制では地元の火災にも対応できず、後悔につながってしまう。そんな思いからS.A.F.Eは生まれました。
大災害だけでなく、地元の火災に気づけなかったという苦い経験もS.A.F.E開発のきっかけの一つです。消防団員は、火災が起きると防災無線や消防車のサイレンで気づくか、電話やメールなど人づての連絡で把握するほかなく、地元の火災でも気づけないことがよくあります。
このままの体制では地元の火災にも対応できず、後悔につながってしまう。そんな思いからS.A.F.Eは生まれました。
- 具体的に、S.A.F.Eにはどんな機能が搭載されているのでしょうか。
斎藤
災害が発生するとアプリに通知が届き、災害地点の情報を瞬時に全団員と共有できます。さらに、誰が何分後、どこに出動できるのかをアプリ上で共有でき、火災現場付近のどこに水利があるのかもマップで表示されます。これにより、管轄以外の現場でも水利を把握でき、少ない人数でも効率的な消防活動が可能になりました。
災害が発生するとアプリに通知が届き、災害地点の情報を瞬時に全団員と共有できます。さらに、誰が何分後、どこに出動できるのかをアプリ上で共有でき、火災現場付近のどこに水利があるのかもマップで表示されます。これにより、管轄以外の現場でも水利を把握でき、少ない人数でも効率的な消防活動が可能になりました。
アナログな情報共有に限界を感じ、S.A.F.Eを導入
- 今回、小野町での防災訓練でS.A.F.Eが活用されましたが、どのような理由からS.A.F.Eを導入したのでしょうか?
吉田
小野町でも災害時や火災発生時における消防団員間の情報共有の仕方には課題はありました。
私自身、消防団として9年活動をしているのですが、消防車のサイレンの音や防災無線は聞き取れないこともあるし、電話やメールでの連絡ではタイムラグが発生するため、消火活動が遅れてしまうこともあります。
また2022年12月1日現在で、小野町には347名の消防団員が在籍していますが、その多くが日中は近隣のエリアに働きに出ているため、自分の地域の情報を得るのには限界があります。とはいえ地元が火事になって、それを把握できていなかったら悔やまれますよね。たとえ自分が駆けつけられなかったとしても、どこで何が起きているかを全団員が瞬時に把握するのは大切なことなので、2021年にS.A.F.Eを導入しました。
実際、土地勘のない場所で起きた火災でも、S.A.F.Eを導入していたことで火災地点や水利は簡単に把握できました。当時は休日の早朝だったこともあり多くの団員が駆けつけたのですが、その中には私のように土地勘のない団員も多数出動していました。
S.A.F.Eがなければ土地勘のない人は出動できないですし、そもそも水利がわかりません。事務局も火災の一報を受けても番地だけでは詳細の場所がわからず手間取るのですが、火災現場と内容を即座に把握でき、スピーディーに消火活動ができたのはS.A.F.Eのおかげでした。
小野町でも災害時や火災発生時における消防団員間の情報共有の仕方には課題はありました。
私自身、消防団として9年活動をしているのですが、消防車のサイレンの音や防災無線は聞き取れないこともあるし、電話やメールでの連絡ではタイムラグが発生するため、消火活動が遅れてしまうこともあります。
また2022年12月1日現在で、小野町には347名の消防団員が在籍していますが、その多くが日中は近隣のエリアに働きに出ているため、自分の地域の情報を得るのには限界があります。とはいえ地元が火事になって、それを把握できていなかったら悔やまれますよね。たとえ自分が駆けつけられなかったとしても、どこで何が起きているかを全団員が瞬時に把握するのは大切なことなので、2021年にS.A.F.Eを導入しました。
実際、土地勘のない場所で起きた火災でも、S.A.F.Eを導入していたことで火災地点や水利は簡単に把握できました。当時は休日の早朝だったこともあり多くの団員が駆けつけたのですが、その中には私のように土地勘のない団員も多数出動していました。
S.A.F.Eがなければ土地勘のない人は出動できないですし、そもそも水利がわかりません。事務局も火災の一報を受けても番地だけでは詳細の場所がわからず手間取るのですが、火災現場と内容を即座に把握でき、スピーディーに消火活動ができたのはS.A.F.Eのおかげでした。
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小野町役場 町民生活課 消防担当 吉田雅俊氏
スマホを見ながら実施した、新時代の防災訓練
- 今回、防災訓練でS.A.F.Eを活用したと伺いました。具体的にどんな訓練をしたのでしょうか?
吉田
今回は現場で指揮を取る人の練度を高めるために、S.A.F.Eで災害現場を特定し、その災害に対してどんな対応を取ればいいのかを図上でシミュレーションする図上訓練を実施しました。私は災害地点を登録するプレイヤーとして参加し、団員全員がアプリ内で情報共有をしながら、Zoomを使って災害本部を立ち上げるという流れです。
当初、消防団員を1ヶ所に集めて全員がスマホを見る訓練はどうなのかと疑問もありましたし、災害現場でスマホを見ることに違和感を持つ人、戸惑う人もいたと思います。でも当日は消防団員のスマホを見る眼差しが真剣で、無線を耳にあてつつスマホを凝視する、新時代の訓練だと思いました。スマホを見ることで全員が同時に火点や水利、現場の状況を把握できると実感してもらえたのは大きな成果です。
ただ、消防団員の年齢層はさまざまなので、有事の際にちゃんとS.A.F.Eを使えるようにするには、今後も訓練を重ねていく必要があります。今後は消防団員が警ら中に落石や倒木を発見したという想定で、その団員が現場の写真を撮って災害地点を登録し、指揮者が指示して出動するような実践的な訓練を行い、災害発生から解散まで一通りの流れをSAFEで使えるようにしたいと思っています。
日本は少子高齢化による人口減少で、どの自治体でも消防団員の担い手不足は深刻な課題です。それが加速する要因として挙げられるのは、消防団員の負担が年々大きくなっていること。昔は数百人の団員がいたけれど数十人になってしまうと、少ない人数で広いエリアをカバーする必要があります。その負担を少しでも軽減することが持続可能な消防団活動には欠かせないと思っています。
今回は現場で指揮を取る人の練度を高めるために、S.A.F.Eで災害現場を特定し、その災害に対してどんな対応を取ればいいのかを図上でシミュレーションする図上訓練を実施しました。私は災害地点を登録するプレイヤーとして参加し、団員全員がアプリ内で情報共有をしながら、Zoomを使って災害本部を立ち上げるという流れです。
当初、消防団員を1ヶ所に集めて全員がスマホを見る訓練はどうなのかと疑問もありましたし、災害現場でスマホを見ることに違和感を持つ人、戸惑う人もいたと思います。でも当日は消防団員のスマホを見る眼差しが真剣で、無線を耳にあてつつスマホを凝視する、新時代の訓練だと思いました。スマホを見ることで全員が同時に火点や水利、現場の状況を把握できると実感してもらえたのは大きな成果です。
ただ、消防団員の年齢層はさまざまなので、有事の際にちゃんとS.A.F.Eを使えるようにするには、今後も訓練を重ねていく必要があります。今後は消防団員が警ら中に落石や倒木を発見したという想定で、その団員が現場の写真を撮って災害地点を登録し、指揮者が指示して出動するような実践的な訓練を行い、災害発生から解散まで一通りの流れをSAFEで使えるようにしたいと思っています。
日本は少子高齢化による人口減少で、どの自治体でも消防団員の担い手不足は深刻な課題です。それが加速する要因として挙げられるのは、消防団員の負担が年々大きくなっていること。昔は数百人の団員がいたけれど数十人になってしまうと、少ない人数で広いエリアをカバーする必要があります。その負担を少しでも軽減することが持続可能な消防団活動には欠かせないと思っています。
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消防団員専用アプリS.A.F.Eを活用した防災訓練の様子
複数の自治体が協力し合えるよう、S.A.F.Eのアップデートを目指す
- S.A.F.Eを活用した防災訓練を見て、情報整備局はどんな手応えを得ましたか?
和田
前年も小野町の防災訓練に参加させてもらったのですが、当時は無線で災害対策本部に火災を伝えて、その場所を紙の地図に落とし込んでいたんですね。その作業に時間が取られていたのを課題に感じて、災害地点の登録機能を新しく実装しました。
今回の防災訓練ではその機能がちゃんと生きていましたし、小野町は消防団員だけでなく町長も図上訓練に参加しており、小野町の防災訓練の熱意を感じました。
前年も小野町の防災訓練に参加させてもらったのですが、当時は無線で災害対策本部に火災を伝えて、その場所を紙の地図に落とし込んでいたんですね。その作業に時間が取られていたのを課題に感じて、災害地点の登録機能を新しく実装しました。
今回の防災訓練ではその機能がちゃんと生きていましたし、小野町は消防団員だけでなく町長も図上訓練に参加しており、小野町の防災訓練の熱意を感じました。
齋藤
スマホを使った新時代の防災訓練だと思いましたね。実は防災訓練前、デジタル化されていなかった消火栓の位置を吉田さんと一緒に何日もかけてデジタルに落とし込んだんです。大変な作業でしたがアナログな情報をデジタル化できたことも、小野町にとって大きな一歩だったと思います。
スマホを使った新時代の防災訓練だと思いましたね。実は防災訓練前、デジタル化されていなかった消火栓の位置を吉田さんと一緒に何日もかけてデジタルに落とし込んだんです。大変な作業でしたがアナログな情報をデジタル化できたことも、小野町にとって大きな一歩だったと思います。
- これは、全国の多くの自治体でもやるべきことですね。
吉田
そう思います。紙の情報をデジタルに落とし込むのは大変な作業でしたが、一度やってしまえば次世代に引き継ぎやすくなります。実際、今回の防災訓練でも災害地点付近の水利を全団員が瞬時に把握できたので、やって良かったと思いました。
そう思います。紙の情報をデジタルに落とし込むのは大変な作業でしたが、一度やってしまえば次世代に引き継ぎやすくなります。実際、今回の防災訓練でも災害地点付近の水利を全団員が瞬時に把握できたので、やって良かったと思いました。
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小野町・吉田氏にインタビューする情報整備局の代表・和田氏
- 最後に、情報整備局の今後の展開について教えてください。
斎藤
S.A.F.Eの機能をブラッシュアップしながら、大災害が起きたときに複数の自治体で助け合える連携機能を作りたいと思っています。
S.A.F.Eの機能をブラッシュアップしながら、大災害が起きたときに複数の自治体で助け合える連携機能を作りたいと思っています。
和田
そうですね。消防団は自治体ごとに組織されて活動しているので、近隣の自治体が協力し合えるようにしたい。
というのも、吉田さんのお話にもありましたが、消防団員は住んでいる地域に職場があるとは限らないからです。
自分が所属する地域以外で活動しないのは勿体無いので、旅先でも職場でも、全国どこにいてもその場所の災害情報がS.A.F.Eに届き、手伝える人は活動に参加できるようにするのが理想。大災害が起きたとき、土地勘のない場所でも消防団員が活動できるよう、できるだけ最速で全国に展開して消防団員の体制を整えたいと思っています。
そうですね。消防団は自治体ごとに組織されて活動しているので、近隣の自治体が協力し合えるようにしたい。
というのも、吉田さんのお話にもありましたが、消防団員は住んでいる地域に職場があるとは限らないからです。
自分が所属する地域以外で活動しないのは勿体無いので、旅先でも職場でも、全国どこにいてもその場所の災害情報がS.A.F.Eに届き、手伝える人は活動に参加できるようにするのが理想。大災害が起きたとき、土地勘のない場所でも消防団員が活動できるよう、できるだけ最速で全国に展開して消防団員の体制を整えたいと思っています。
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インタビューに応える情報整備局の和田氏と斎藤氏
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情報整備局株式会社
Japan