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インタビュー

仙台発の「防災のビジネスモデル」を構築し、海外展開を目指す アンデックス

2021.11.09
  • AI、機械学習
  • 画像・動画技術
  • データ解析
  • IoT 、センサー
  • 社会基盤インフラ
  • 参加者インタビュー
  • BOSAI-TECHビジネスマッチング
仙台のIT企業・アンデックスは東日本大震災の経験から、災害時に身の回りの情報収集ができる地域情報アプリや、「AIカメラ」で避難所運営を効率化するシステムの開発を進めている。長年培ってきたITシステム開発力と通信事業での強みを活かし、日本だけでなく海外の災害や危機管理にも活用できる防災サービスの開発を目指す。

コロナ禍の中、オンラインで海外進出を模索

コロナ渦中の2021年3月、仙台市などがオンラインで主催した防災分野のグローバルなビジネスマッチングイベント「BOSAI-TECHビジネスマッチング」。欧米やアジアの多様な企業がピッチする中、自社のサービスを英語で説明するアンデックス社員の姿があった。

マレーシア出身の、ムハマド・ハイリル・アムリ・ビン・ナルザリさん(以下、ハイリさん)。東北大学留学中にアンデックスにインターンし、2019年から同社に就職。ITシステム開発などの業務をこなしながら、同社サービスの海外進出にも取り組む。
同社初の外国人社員として入社したハイリさん
同社は東日本大震災後、災害時の情報収集にも活用できる地域観光アプリ「マプコミ」を開発した。2012年のリリース後は一部民間企業で導入されていたが、「うちにあるこの技術をさらなる防災サービスのアイデアに使えないかと」(ハイリさん)、アプリにドローンのカメラによる災害時の中継機能や、避難所へのルート誘導をする機能を搭載する新たな防災のアイデアを盛り込み、「BOSAI-TECHビジネスマッチング」でその構想を発表した。

イベントでは、韓国、インドネシア、アメリカ、フランス、タイの企業から面談のオファーを得た。「例えば東南アジアだと洪水対策に関心があり、アメリカやフランスだとテロの観点が重視されるというように国によって意識が違うことがわかりました。イベントを通して海外企業とネットワークができたので、これから具体的なコラボが進む可能性は十分にある」と、ハイリさん。

三嶋順代表は「海外進出はコロナで2年くらい止まってしまっていましたが、こうしてオンラインでやり取りすると、海外との距離感があまり感じられなくてよかった。まずZOOMでコミュニケーションをして、海外に行ったときにはもうビジネスを進められる状態にできる。そんな海外展開の方法のアイデアときっかけをもらいましたね」と、手応えを話す。
アンデックスの三嶋順代表

「AIカメラ」で効率的な支援物資の振り分けを可能に

アプリの他に、同社が今年度特に開発に力を入れる防災サービスがある。災害時に開設される避難所に「AIカメラ」を設置し、避難所の運営を効率化するシステムだ。

避難所の受付にカメラを設置することで、避難者のおおまかな年齢や性別、人数などをAIが自動で判別。そこから得られた避難者のデータを自治体のサーバーと連携して共有することで、自治体職員が避難所ごとの人数や属性を把握し、必要な支援物資の振り分けに活用できるしくみだ。例えば乳幼児がいるならミルクやおむつが必要、女性なら生理用品が必要、といったように、その避難所に合わせた適切な支援物資の配分が容易になる。

避難所から自治体にデータを送るための通信には、同社が仙台市で事業者として唯一の免許を持つ地域限定のネットワーク「地域BWA」を活用することで、災害時でもつながりやすい通信が可能になるという。
「地域BWA」を活用したWi-Fiルーター
2011年の東日本大震災を仙台で経験した三嶋代表は、家族の避難した避難所でその混乱を目の当たりにした。「避難所が混み合っている中で救援物資がなかなか来なかったり、分配がうまくいかなかったりするのを見ていました。避難者の人数や性別、年齢などの比率がわかれば、救援物資の振り分けに役立つはずだと考えました」

同社は今年2021年、防災サービスを開発する仙台市のプログラム「仙台BOSAI-TECH Future Awards」に応募。「AIカメラ」による避難所運営の効率化システムの事業案は一次審査を突破した。12月の最終審査に通れば仙台市との実証実験が始まり、事業化に向けた取り組みがいっそう進むことになる。

「海外視点」で防災サービスの開発を

ハイリさんは今年の夏、出身校である東北大学の「レジリエント社会に向けた起業家育成プログラム」にも参加。起業に関する講座や被災地のVRでのフィールドワークなど、一カ月間のプログラムを通じて災害への理解や防災サービス開発への学びを深めた。在学中にも留学生向けの被災地ツアーの企画やボランティアをしてきたハイリさんは、防災分野のビジネスに携わる思いをこう語る。

「私はマレーシア出身で、大雨や洪水はありますが、地震や津波といった大きな災害はほとんどなかった。5年前に実際に東北という地震が多い場所に来て、日本の社会で災害がどう関わっているのかや、被災したまちの復興に興味を持ちました。防災分野のビジネスは、災害時だけやるのは難しいので、平時でも役に立って、緊急時、災害時にそれが助けになるようなビジネスにしたい。社会に価値を与えられるようなものを作りたいですね」

自社の培ったITシステムの開発力を防災分野にも活かそうと、さまざまな取り組みを進める同社。その原点について三嶋代表は「10年前の震災を経験したことが大きい。災害は忘れたころにやってくるけど、それって忘れちゃいけないことですから」と話す。

「では防災分野のサービスというと、どういう形がいいのか。それは防災のためだけに用意しておくと厳しくて、平時でも使い勝手がいい形にしなくちゃいけない。そんな防災ビジネスのモデルを作って、他の地域で横展開していくことでマネタイズしていく必要があると思います。仙台、宮城の中だけで考えると厳しいですが、『仙台発のビジネスモデル』が海外企業とのマッチングをすることで、それが標準化され、ビジネスになるのではないかという考えがあります。欧米はテロ対策、東南アジアは水害対策といったように国ごとに違うニーズに合わせてカスタマイズしていく必要があると思います」
アンデックス株式会社
https://and-ex.co.jp/

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