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消防団の迅速な消火活動を、スマホアプリで実現 情報整備局×福島県須賀川市

2022.01.27
  • エンタープライズ向けソフトウェア
  • 事例
福島県須賀川市のIT企業・情報整備局は、消防団の迅速な消火活動を助けるスマートフォンアプリ「S.A.F.E.」を開発した。現在福島県の10市町村で導入が進み、現場の消火活動を支える重要な役割を果たしている。情報整備局代表の和田晃司さんと、アプリを導入している須賀川市の市民安全課消防係・室実希弘さんに開発経緯やこれからの展望を聞いた。

消防団員としての体験からアプリを開発

消防団専用アプリ「S.A.F.E.」は、スマートフォンにインストールすると、団員に火災発生情報がプッシュ通知で送信される。団員はすぐに火災の発生場所を地図上で確認し、出動できるかどうかの返答ができる。地図上では発生場所までの経路や現場近くの消火栓・防火水槽の位置を確認することができ、迅速な消火活動ができるような工夫がされている。
▲「S.A.F.E.」の画面。火災発生の通知を開くと、場所や周辺の消火栓の位置などをすぐに確認できる(「S.A.F.E.」紹介動画より)
和田さんは2008年から11年間、須賀川市の消防団員として活動していた。「消防団専用アプリ」のアイデアが生まれた背景には、自身の消防団員としての体験がある。

「消防団員だったときに親戚の家で火事があったのですが、現場から遠くに住んでいたこともあり自分に連絡が来るのが遅れてしまった。結局、火事を知って現場に行けたのは翌朝でした。そのとき、団員にもっと迅速に、一斉に通知が来るような効率的な連絡のしくみが作れないかと思いました」
火災が発生した際、多くの消防署では組織の上部から下部へと電話やメールなどで火災情報が回されるが、時間がかかり、初動が遅れてしまう課題があった。消防団員は消防車のサイレンの音を聞きつけて自発的に現場へ駆けつけることもあるというが、それも偶然近くに居合わせなければ難しい。

そこで和田さんは、消防団員たちが火災情報を即時に把握できるスマホアプリを考案。それまでアプリ開発の経験はなかったが、2015年から開発を始めた。2018年から須賀川市での運用が始まった「S.A.F.E.」では、119番通報を受けた消防署の司令室が情報整備局のサーバーに火災発生情報を送ると、所属する消防団員のアプリに一斉に通知が自動配信されるしくみを実現。各自が出動可能かをアプリ上で返答し、誰が現場に出動できるのかの情報を消防団全体で共有することも可能になった。

須賀川市市民安全課消防係の室さんは、現場での反応をこう話す。「現場の地理に詳しくなくても、地図でのナビ機能があるので一目瞭然なところがいい。消防団員からは、特に水利(消火栓や防火水槽の位置)がわかることについて評判がいいですね。水利が可視化されていると、現場に行く前にホースを何本持っていけばいいのかもわかってとても便利です。消火活動だけでなく、消火栓や防火水槽の日常の点検や修繕対応にも役立っています」
運用を始めてから、和田さんの元には「S.A.F.E.」があったことで人を守ることができた、との消防団員の声も届いた。「その団員はアプリですぐに通知が来たから、サイレンの音が鳴る前に火災に気付き、現場にいち早く駆けつけることができたそうです。現場に到着すると危険な状態で消火している男性がいて、すぐに法被(はっぴ)を被せて救出したとのことでした。そうした声を聞いたとき、これまでやってきてよかったな、と感じました。災害などの緊急時は情報が迅速に、正確に届き共有できることが本当に大事なことだと思っています」

消防だけでない「防災アプリ」への進化を目指して

「S.A.F.E.」は地域防災への貢献が評価され、2020年に「ICT地域活性化大賞2020」の大賞・総務大臣賞を受賞。2022年1月時点で福島県10市町村で導入されているほか、静岡県浜松市での試験導入も始まり、福岡、東京、仙台での営業も展開していくという。和田さんは「S.A.F.E.を全国展開し、消防団を支援する活動を続けていきたい」と意気込む。
▲水害など災害にも活用できるよう機能拡張が進む(「S.A.F.E.」紹介動画より)
消防のためのアプリとして始まった「S.A.F.E.」だが、より広範な「防災」の分野にも活用できるよう、機能の拡張も進めている。2021年度は仙台市のBOSAI-TECHイノベーション創出促進事業での実証実験サポートプログラムにも参加し、災害時に民間企業が支援物資を避難所へ配給するための連絡・調整機能をアプリに搭載する実験に取り組んでいるところだ。

さらに「アプリがハザードマップと連携すれば、消防団が水害などの災害時に活動する際、危険な場所を地図上で位置情報と結びつけて把握できるはず」と、室さんは地域のさまざまな災害に応用できる可能性にも期待する。和田さんは「例えば台風で土砂崩れが起きたり道路が冠水したりしていて消防団が警備に当たった際、現場の冠水や通行止めの情報などを自治体の災害対策本部とリアルタイムで情報共有できればとても便利ですよね。行政と消防団がより連携できるよう、地図上にピンを立ててテキストで情報を書き込めるような機能拡張も考えています」と、今後の構想を語った。

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