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日本最北の国家戦略特区で実験が進む「近未来技術」とは?秋田県仙北市の挑戦

2022.02.07
  • 仙北市
  • ロボティクス、ドローン
人口2万5千人弱、田沢湖や角館を擁する秋田県仙北市。急速な人口減少と少子高齢化が進むこの市でいま、ドローンや自動運転などの「近未来技術」をまちの産業として発展させる取り組みが進んでいる。農業や防災など地域ならではの課題をさまざまなIT技術を用いて解決しようと取り組む仙北市総務部地方創生・総合戦略室係長の明平英晃さんに、技術を活用して描く地域の未来を伺った。

深刻な人口減少と少子高齢化の中で

人口が年間約480人ずつ減少し、2021年7月時点で高齢化率が44.2%に達した仙北市。地域を担う若い世代の流出を食い止める策として市が注力するのが、「近未来技術」の推進だ。

「深刻な人口減少と少子高齢化の中で、若者に魅力を感じてもらえるようなまちづくりをしなければならない。そのためには近未来技術を活用し、できることは何でもやってみよう、という方針のもと取り組みがスタートしました」と、明平さんはその背景を話す。
▲仙北市総務部地方創生・総合戦略室係長の明平英晃さん
仙北市で「近未来技術」の導入が進んでいるのが、市の基幹産業である農業分野だ。市では2018年から、農業をITで効率化する「スマート農業」の実証実験を開始。田んぼに設置したセンサーで水温や日射照度などのデータを取得してスマートフォンからモニタリングするなど、IT技術の実用化に向けた実験に取り組んだ。ドローンの導入にも力を入れ、除草剤や肥料の散布のほか、空撮画像から稲の生育状態を解析するなどの実験も展開。市はドローンの機体購入への補助金制度も設けており、明平さんは「補助金を活用して、農業でドローンを活用する人が増えてきている」と、市内でじわじわと導入が広がる手応えを語る。
▲ドローンで空中から田んぼに除草剤を散布する実証実験のようす
広大な面積の一方で集落ごとの高齢化が進み、冬は雪も深くなる仙北市では、買い物など日常生活に必要な交通手段が制限される「交通弱者」の存在も大きな課題だ。そこで、市は物流や人の移動にIT技術を生かす実証実験にも挑んできた。2016年には、ドローンが市内の小学校の図書を1.2km離れた中学校まで運ぶ実験に挑戦。2019年には、ドローンが農作物を民宿から直売所まで輸送する実験や、地元スーパーから集落へ食料品を輸送する実験も行われた。市内では日本で初めて公道での「無人運転バス」の走行も実施され、車の自動運転化を見据えた実証実験も進む。
▲実証実験で農作物を運ぶドローン
▲日本で初めてとなった、公道での自動運行バスの走行実験

「地元でもやりたいことができる」を若者に示したい

仙北市がこれまで取り組んできた実証実験ではさまざまな課題が浮かび上がり、実用化や事業化に向けては多くの障壁も見えてきた。一方で明平さんは、国家戦略特区としてこの6年半あらゆる取り組みを進めてきたことで、市民の反応が変わってきたと感じている。

「市民にとって、スマート農業や近未来技術が身近になってきたと感じます。若い人でも特区の意味がわかってきた方もいて、最近では『こういうことをやってみたいんだけど』と自ら事業のアイデアを市に相談しに来てくれる人もでてきました。新しいことにチャレンジするのはリスクもあって難しいことですが、うまく行政を利用してビジネスを拡大していく意識を持ってもらい、行政・民間企業が連携しながら地域経済を回していくことができれば理想です。若い人たちに、都会に出ていく選択肢もいいけれど、地元でもやりたいことができますよ、という基盤を作って示してあげられたらいいなと思うんです」

災害情報をいち早く知れる「防災情報プラットフォーム」開発へ

そんな仙北市の次なる取り組みが、「防災」の分野だ。市は国土交通省の交付金を活用し、行政とともに市民が活用できる防災情報プラットフォームを開発中(2022年2月時点)。市民がスマホやPCでアクセスすると市内のさまざまな防災情報が確認できるもので、将来的には市内の川の水位や各避難所の避難者数などもリアルタイムで確認できるようにしたいという。今年度中にシステムを完成させ、2022年度から実証的に運用を始める計画だ。

「防災分野は、行政から市民に対して情報を確実に効果的に伝達することが大事。防災無線が聞こえにくい場合もあるので、情報を確実に伝えられるような通信手段、伝達手段を確立する必要があると思っています」と、明平さんは話す。

2022年、仙台BOSAI-TECHイノベーションプラットフォームのメンバーにもなった仙北市。明平さんは他の自治体や民間企業との連携が進むことに、こう期待を寄せる。「東北の自治体は人口減少など共通の課題があることが多いですが、その解決策はそれぞれ。特に防災分野は統一されたものがなく、自治体任せになっています。今後BOSAI-TECHで東北の自治体同士が連携して事例を共有しながら、課題に対するベストアンサーをみんなで求めていく仕組みができたらいいなと思います。防災分野での失敗は人の命に関わることで、行政は何としてもそれを避けなければならない。そのための参考事例はいくらあってもいいので、どんどん最善の道を進むという意味で、このBOSAI-TECHから生まれる連携に期待を持っています」

仙北市・国家戦略特区
https://www.city.semboku.akita.jp/senryaku/index.html

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