事業者に聞く
防災無線を「音声加工技術」で聴こえやすく サウンド株式会社
2022.02.18
九州大学発ベンチャーのサウンド(福岡市)は独自の音響設計学の技術を活用し、防災無線で流れる音声を聴こえやすくする実証実験に取り組んでいる。同社は仙台市での実証実験で得た知見を生かし、全国へサービスを展開していきたいと意気込む。
難聴者でも聴き取りやすい音声に「変換」する
九州大学の中島祥好名誉教授が研究してきた音響設計学の技術を製品やサービスとして広く社会実装していこうと、2020年に創業した大学発ベンチャーのサウンド。独自に開発した「音声加工技術」で、難聴を抱える人が補聴器を付けなくても聴き取りやすいような音声を作り出すサービスを提供している。
同社の音声加工技術は、高齢の難聴者の特性に合わせて生み出されたものだ。人の聴覚は加齢によって衰えるが、全ての音が一律に聴き取りにくくなるわけではなく、高い音が顕著に聴こえにくくなるという特徴がある。日本語では子音が高い音にあたり、この「子音」を強調した音声加工を施すことで、難聴者でも元の音声が聴き取りやすくなるという。
同社の音声加工技術は、高齢の難聴者の特性に合わせて生み出されたものだ。人の聴覚は加齢によって衰えるが、全ての音が一律に聴き取りにくくなるわけではなく、高い音が顕著に聴こえにくくなるという特徴がある。日本語では子音が高い音にあたり、この「子音」を強調した音声加工を施すことで、難聴者でも元の音声が聴き取りやすくなるという。
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同社の音声加工技術で、子音部分の音圧を上げて聴こえやすくした音声(図:サウンド提供)
こうした音声加工技術を日常生活のさまざまな場面に組み込み、難聴者でも聴き取りやすい音声を普及させていくのが同社の目標だ。同社は2021年に福岡市で、区役所の受付窓口での会話を聴き取りやすくする実証実験を開始。受付窓口のマイクとスピーカーとの間に音声加工技術を搭載したスマートフォンをつなぐことで、その場で音声が聴き取りやすく変換されるしくみを開発した。感染症対策でパーテーションやマスク越しの会話を余儀なくされる中で「聴き取りやすい音声」が実現できるよう、行政や企業の窓口、交通機関のアナウンスなどでの導入が期待されている。
災害の騒音の中でも聴こえやすい防災無線を目指して
そんな同社が2021年度から仙台市で取り組み始めたのが、自治体の防災無線の放送を聴き取りやすくする実証実験だ。津波による避難指示など命に関わる重要な情報が流れる防災無線だが、屋外の騒音で聴こえづらくなることも多い。その音声を、スピーカーを変えるのではなく「音声加工技術」で聴き取りやすくするというのが同社の挑戦だ。
同年2月の実験では、既存の防災無線の音声を予め同社で加工し、加工した後の音声を仙台市内の屋外スピーカーで流して聴こえ方の変化を試す。同社は家庭用のスピーカーなどへの音声加工技術の搭載にはノウハウがあるものの、大規模な屋外スピーカーを使った実験は初めて。同社代表の小山昭則さんは「現場を視察し、既存のシステムへ入れ込むには規格の問題などさまざまな課題があることがわかりました。顕在化した課題に取り組んでいき、来年度には仙台市の防災訓練で使えるようにしていくことが目標です」と、今後を見据える。
同年2月の実験では、既存の防災無線の音声を予め同社で加工し、加工した後の音声を仙台市内の屋外スピーカーで流して聴こえ方の変化を試す。同社は家庭用のスピーカーなどへの音声加工技術の搭載にはノウハウがあるものの、大規模な屋外スピーカーを使った実験は初めて。同社代表の小山昭則さんは「現場を視察し、既存のシステムへ入れ込むには規格の問題などさまざまな課題があることがわかりました。顕在化した課題に取り組んでいき、来年度には仙台市の防災訓練で使えるようにしていくことが目標です」と、今後を見据える。
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サウンド社がPC上で行った、仙台市の防災放送の音声加工デモンストレーション。PC上では、騒音の中でも聴き取りやすい音声に変換することができた
「音」にはまだ技術革新のスペースがある
小山さんにとって、「防災テック」の開発には特別な思い入れがある。2016年の熊本地震。小山さんは福岡市から熊本の自宅へ帰る途中の電車で地震にあった。地元・熊本で災害ボランティア活動にも従事する中で、「災害現場では人海戦術とも言える対応が多く、テクノロジーの力が発揮されていないことを目の当たりにしました。災害時にテクノロジーを入れることで効率的な運営ができると感じ、防災に関する仕事がしたいという思いがずっとありました」。
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サウンド代表の小山昭則さん
そんな中で仙台市の「仙台BOSAI-TECH Future Awards~テクノロジーで明日を守るプランニングコンテスト」の存在を知り、実証実験への応募に至った。「防災にテクノロジーを取り入れるという事業はあまり聞いたことがなく、仙台で新しい取り組みをしているのなら地域にとらわれずやってみよう、と思いました。実証実験で結果を出せれば全国へ展開していけたらと思いますし、津波や地震の多い過酷な環境とも言える日本で通用すれば、世界標準のサービスにもなりえると思っています。仙台市と一緒に『防災テック』開発の一部を担わせてもらえたら」
より聴き取りやすい音声を世の中に普及させることを目指し、同社の挑戦は続く。「高齢化が進む社会で、高齢者が補聴器がなくても音声でコミュニケーションできる世界をつくりたい。その一つが防災分野です。動画などに比べて『音』の分野は進化が進んでおらず、まだまだ技術革新のスペースがあると感じています。期待に応えられるように、開発を進めていきたいですね」
サウンド株式会社
https://sound-co-ltd.mystrikingly.com/
より聴き取りやすい音声を世の中に普及させることを目指し、同社の挑戦は続く。「高齢化が進む社会で、高齢者が補聴器がなくても音声でコミュニケーションできる世界をつくりたい。その一つが防災分野です。動画などに比べて『音』の分野は進化が進んでおらず、まだまだ技術革新のスペースがあると感じています。期待に応えられるように、開発を進めていきたいですね」
サウンド株式会社
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