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避難所の受付をITで効率化する「避難所運営支援システム」を開発 株式会社フォルテ

2022.02.22
  • AI、機械学習
  • IoT 、センサー
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青森市のIT企業・フォルテは、災害発生時の避難所の受付をITで効率化する「避難所運営支援システム」の開発に取り組んでいる。新型コロナウイルスのワクチン接種会場の受付システムを開発・運用した経験を生かし、感染症対策や個人のプライバシーに配慮した形での新しい避難所運営のあり方を提案しようとしている。

感染症対策とプライバシーに配慮した避難所運営を目指して

2005年創業のフォルテは、電動アシスト自転車に装着すると骨伝導の音声で周辺情報を案内してくれるシステム「ナビチャリ」をはじめ、ユニークなIoTデバイスやシステムを数多く開発してきた。「デバイスを開発するだけでなく、そこに位置情報やクラウド上のデータを結びつけることでユーザーに役立つさまざまなサービスを提供できるのが強み」と、同社代表の葛西純さんは話す。
  • フォルテ代表の葛西純さん
同社が災害時の避難所運営に関わることになったきっかけは、2020年8月に青森県今別町で行われた実証実験だ。新型コロナウイルスの流行が収まらない中、今別町では避難所での感染症拡大を防止するため、さまざまなIT技術を活用した実証実験を実施。同社は顔認証技術を搭載した端末を避難所の受付に設置し、どの住民が避難したかの情報をすぐに把握できる効率的な自動受付システムを開発・実験した。

実験は技術的には成功したが、浮かび上がったのが住民のプライバシーの問題だ。実験したシステムでは住民の写真を予め登録しておき、端末で避難者の顔と照合することで本人確認をするしくみだった。「実際に避難所に導入することを考えたとき、元のデータとなる住民たちの写真をどう収集するのかや、個人の写真を用いることに抵抗を感じる住民がいることが想定されました。実験はできるけど、実装が難しく普及が進まない、という状況でした」(葛西さん)

ワクチン接種会場から生まれた「QRコード整理券」

そんな課題の解決への糸口は、新型コロナウイルスのワクチン接種会場の受付システムを開発したことで見えてきたという。同社は千葉県木更津市の接種会場の受付システム開発を受注。受付の端末で検温すると「QRコード付きの整理券」が発行されるしくみにしたことで、顔写真ではなくQRコードに予診票や問診結果などの個人の情報を紐付けることが可能に。問診票のデジタル化や経過観察時間の案内の自動化を実現し、接種会場での人の流れを円滑化することができた。

この経験から、「QRコード付き整理券」を避難所運営にも用いる構想が生まれた。災害の多い西日本や岩手県でもヒアリングを重ねてサービスを練り、2021年度に仙台市の「仙台BOSAI-TECH Future Awards~テクノロジーで明日を守るプランニングコンテスト」に構想を応募。感染症対策や個人のプライバシーに配慮したシステム設計も高く評価され、仙台市内での実証実験の実施が決定した。
  • 検温するとQRコード付き整理券が発券される(同社サービス紹介動画より)

一人3分以上かかっていた受付を、15秒に短縮

同社が開発中の「避難所運営支援システム」は、避難所の受付に設置した端末から検温すると、自動で整理券が発券される。整理券には受付番号、QRコード、体温が記載され、QRコードを読み込むと避難者が名前や住所、連絡先など受付の情報を自身のスマホや避難所に備え付けられたタブレット端末から入力することができる。

「これまで避難者一人あたり最低でも3分かかっていた受付での書類の記入作業をなくし、受付時間を15秒にまで短縮できます。これにより、受付での人の滞留を減らすことができます」と、同社の小早川昂平さん。自治体側にとっても、これまで避難者一人一人の用紙を集計しデータを手入力していた作業が自動化されることで、より少ない人数で効率的に避難所を運営することが可能になる。
  • 受付で紙で記入していた作業を、スマホやタブレットで可能に(同社サービス紹介動画より)
同社は仙台市内の小学校の体育館で避難所運営の実証実験を行う計画で、参加する仙台市の職員にシステムの使い勝手や運用の実現性を評価してもらう予定だ。「災害が多発し、全国の自治体で防災や災害対策への注目度は上がっていると感じる。この仙台市での取り組みがサービス展開の加速材になれば」と、葛西さんは意気込む。

「避難後のケア」まで可能にするシステムに

「最近もトンガの火山噴火の影響で津波警報が発令されましたが、岩手県では避難が混乱したとの話も聞き、避難所対策はいまだ大きな課題になっています」と、葛西さんは指摘する。今後は避難所の受付にとどまらず、「避難後のケア」まで実現できるシステムを目指し機能を広げていきたい考えだ。

「受付システムに、救援物資の管理、ボランティアの業務割り当てや勤怠管理など、避難所運営の助けになる機能も追加していきたい。避難者をケアする面でも、例えばお薬手帳と連携して服薬データを参照できるようになれば、避難者に必要な薬を把握することができます。開発中の受付システムにこうした『避難した後のシステム』を一個一個足していく。こうしたしくみを自治体と一緒に作り上げていければと考えています」

そして今回、仙台BOSAI-TECHイノベーションプラットフォームに参加して防災のサービスを開発することに、こう期待を寄せる。「一社だけではできないことだと思っていますし、『産業』にならないとサービスは続かないと考えています。とりあえず開発を大手に投げてITシステムのスクラップアンドビルドを繰り返すというのではなく、地元ができることは地元の会社でやったほうがいい。東北の地域の企業が連携して産業が生まれれば地域にお金が落ちるし、そこから応用した技術を展開できる。それが持続できるサービスに育っていくのではないかと思います。この『防災テック』が、そんなしくみになればいいなと思っています」

株式会社フォルテ
https://www.forte-inc.jp/

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