レポート

災害時の物資支援のコミュニケーションを、ITで改善する プライムバリュー

2021-02-23
地方自治体と災害協定を結ぶ大手スーパーは、災害発生時、自治体の要請に応じて食料や飲料など多くの支援物資を供給する重要な役割を果たしている。一方で災害直後の両者のコミュニケーションは電話やFAXなどが主で、膨大な情報を処理しなければならない現場担当者に大きな負担がかかっているのが現状だ。プライムバリューはNECプラットフォームズと連携し、こうした災害時の物資供給を円滑化するITシステムを構築しようとしている。

震災後に抱いていた「防災に役立ちたい」という思いを形に

顧客の抱える課題に合わせたITツールを提案し、IT環境の構築や運営サポートを一体的に行うプライムバリュー(本社・宮城県名取市)。代表の吉田亮之さんが仙台市のBOSAI-TECHイノベーションプログラムに参加した背景には、東日本大震災以来、何らかの形で防災分野の役に立ちたいとの思いがあったという。

「仙台で震災を経験して被災者となりましたが、その後全国で起きている災害の被災地に対して何かできたかというと、何もできていない。何か事業で取り組んでいけることがあれば、と以前から思っていました。前職の通信会社から独立した今は自分で事業を立ち上げられる立場になり、災害時に被災者を助けられるソリューションを作れたらいいなと思ったんです」と、吉田さんは話す。

仙台出身で同社のサーバーサイドエンジニアを務める佐藤順俊さんも「震災のときに何かしたいなと思っていたけど、やれることは多くなかった。事前に被害を最小限にする『防災』という分野に携わりたい気持ちがありました」と、思いを明かす。

災害時の食料支援に、効率的な受発注システムを

同社がこのプログラムでパートナーを組むことになったのは、コープ東北と味の素ファンデーションだ。コープ東北は地方自治体と災害協定を結んでおり、大規模災害が発生した際には、被災地域に食料や飲料などの生活支援物資を提供している。みやぎ生協HPによると、東日本大震災の際もみやぎ生協は2011年5月までに県内沿岸各市町の避難所や仮設住宅に無償で約35万点、有償で約363万点の物資を支援した。

コープ東北へのヒアリングを通して浮かび上がってきた課題が、支援物資を提供する際の地方自治体とのコミュニケーションだ。災害発生時には協定に沿って自治体から物資の支援要請の連絡が来るが、ほとんどが電話かFAXでのやりとりで、一日で数百枚〜数千枚のFAXが届くこともあるという。緊急性の高い食料支援は受注後すぐに配送までを手配する必要があるが、限られた職員が注文や配送先の確認作業、社内での正確な情報共有を担当しなければならず、現場の負担が大きくなっているのが現状だ。

この課題を解決するため、プライムバリューはプログラム参加企業のNECプラットフォームズと協力し、ITシステムの構築を進めることに。「まずは自治体からの情報をいかにデータ化するかに取り組みたい」と、吉田さん。自治体との電話・FAXでのやりとりをデータとして可視化するシステムを導入することで、正確で迅速な記録や社内でのスムーズな情報共有をはかりたい考えだ。

さらに自治体との協議の上で必要な支援物資の組み合わせを予めパッケージ化しておくことで、自治体側がwebフォーム上で簡単に発注ができ、受注した社内では受注管理から発送作業までを一貫して行えるようなプラットフォームの開発を目指す。災害時のネットワーク環境の構築をNECプラットフォームズが、ソフトウェア開発をプライムバリューが担当する計画だ。吉田さんは「支援企業が受発注を効率化できる上に、システム上で支援状況が把握できるようになれば支援物資の供給過多も防げるはず。各避難所にもこのシステムを導入することで、より円滑で正確な支援も可能になるのではないかと思います」と期待する。
プラットフォーム内に集まった情報は災害支援に関わる他の企業とも共有できるよう、他企業も必要な情報を読み出すことができる「オープンAPI」の開発も進めたい考えだ。例えば味の素ファンデーションは災害時の人々の食事や栄養に関する調査や支援活動を展開しているが、このプラットフォームの情報を活用すれば、自治体の発注状況や他の企業の支援物資の発送状況をリアルタイムで把握することができ、災害支援で他の企業や自治体との連携を円滑に進めることができる。

同社はコープ東北などで日常的な社内の受発注システムとして導入されることを目指し、災害発生時には自治体や他企業と速やかに連携して支援活動ができるようなプラットフォームとして機能させたい考えだ。吉田さんは「支援企業に多く使ってもらえるソリューションにしたい。そのためには多くの企業が普段からも利用しやすい形になるよう、構想をまとめていきたいですね。そのためには弊社だけの力では困難で、コープ東北さんやNECプラットフォームズさんと共同で進めていけたら」と語る。

災害支援時のデータを残し、後の災害に活かす

こうして災害直後の支援に関するやりとりをデータ化して可視化することは、後の災害に備えるための記録としても大きな意義を持つはずだと、開発を担当する佐藤さんは語る。「データが残ることで、分析して次に活かすことができる。あの時こうだったよね、という話が感覚だけでなくデータとして残れば、災害時に必要な支援内容や、時期ごとの支援物資の傾向などがわかってくるのではないでしょうか」

このサービスが世の中を変えるようなものになれば、と期待する佐藤さん。「災害時の情報がデータ化されれば、まだまだ私たちが知らない需要も埋まっていると思います。自治体や小さなスーパーなど、さまざまな企業や団体、個人でも使えるようにすることで、非常時の支援を少しでもよくしていけたらいいなと思いますね」
吉田さんは「キャッシュ面など課題はありますが、次年度以降もこのサービス開発を続け、小さくてもプロダクトローンチに持っていきたい」と、今後に向けた意気込みを語る。「この事業を含め、私たちの会社は先に商品パッケージや特定の技術ありきではなく、お客さんの課題にゼロから一緒に解決策を考えていくアプローチを取っています。これからも色々な困りごとをITで解決するような事業を行っていくので、多くの企業に頼ってほしいですし、話を聞いてみたいという人はぜひご連絡をいただきたいですね」
プライムバリュー株式会社
https://www.prime-value.co.jp/

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