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≪Interview≫震災を経験した仙台から、世界の災害リスクを減らす「防災テック」を生み出す
2021-02-25
2011年、千年に一度とも言われる巨大災害を経験した仙台市。あれから10年近くが経ったこの場所で今、ITテクノロジーを活用した防災分野の製品やサービス「防災テック」を生み出そうとする動きが高まっている。国内外の大手企業から地場企業、大学、行政までが連携して防災分野のビジネスを育て、仙台から世界に発信していこうとするこのプロジェクト。推進する思いや背景を、仙台市産業振興課の神倉崇課長と小池伸幸主任に聞いた。
「防災」を、人々の生活の中に織り込んでいく
「防災テック」--聞き慣れないこの言葉は、「防災」と「テクノロジー」をかけ合わせた造語だ。仙台市は2019年度から地域の大学や企業と連携し、ITを活用した防災分野の新しい製品やサービス「防災テック」を生み出すべく、さまざまな取り組みを進めている。
取り組みの柱となっているのは、仙台開催となった2015年の国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」だ。防災分野の国際的な目標を定めたこの枠組はSDGs(持続可能な開発目標)にも明記され、「仙台」の地名が世界的に知られる機会にもなった。東日本大震災から10年を迎えるのを前に、神倉課長はこう語る。
「震災から時が経つにつれ、記憶も風化していきます。仙台市として今後どのように震災の経験を発信していくべきかを考えたとき、鍵となったのが仙台防災枠組の存在でした。海外では防災に関わる人々の間で仙台防災枠組が広く知られていることを知り、仙台市でもこの枠組を軸に据えた防災分野の産業振興を考えていこう、という方針になりました」
仙台防災枠組では災害リスク削減のための備えの必要性やよりよい復興のあり方が示され、学術機関や民間企業など多様な関係者を巻き込む必要性も明記されている。「いかにして仙台防災枠組に記された防災の観点を、製品や、生活や、人の心に織り込んでいけるかが大事。そのためには、産業界や学術界とも連携しながら、防災を色々な形で社会実装していかなければならない」。そんな考えのもと、大学や国内外の民間企業と手を携え、オープンイノベーションの形で「防災テック」を生み出していく仙台市の取り組みが始まった。
取り組みの柱となっているのは、仙台開催となった2015年の国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」だ。防災分野の国際的な目標を定めたこの枠組はSDGs(持続可能な開発目標)にも明記され、「仙台」の地名が世界的に知られる機会にもなった。東日本大震災から10年を迎えるのを前に、神倉課長はこう語る。
「震災から時が経つにつれ、記憶も風化していきます。仙台市として今後どのように震災の経験を発信していくべきかを考えたとき、鍵となったのが仙台防災枠組の存在でした。海外では防災に関わる人々の間で仙台防災枠組が広く知られていることを知り、仙台市でもこの枠組を軸に据えた防災分野の産業振興を考えていこう、という方針になりました」
仙台防災枠組では災害リスク削減のための備えの必要性やよりよい復興のあり方が示され、学術機関や民間企業など多様な関係者を巻き込む必要性も明記されている。「いかにして仙台防災枠組に記された防災の観点を、製品や、生活や、人の心に織り込んでいけるかが大事。そのためには、産業界や学術界とも連携しながら、防災を色々な形で社会実装していかなければならない」。そんな考えのもと、大学や国内外の民間企業と手を携え、オープンイノベーションの形で「防災テック」を生み出していく仙台市の取り組みが始まった。
仙台のIT産業を盛り上げながら、世界の災害リスクを削減する
「防災テック」を生み出す事業の一つとして仙台市が2020年度から始めたのが「BOSAI-TECHイノベーション創出プログラム」だ。国内大手企業とIT企業とが連携して仙台で防災に関する課題解決サービスを開発する通年プログラムで、今年度は5つの大手企業・団体と仙台で事業展開するIT企業7社が参加。参加企業は東北大学の災害に関する講義や、メンターによる事業開発レクチャーなども受講しながら、多角的な視点で「防災」に役立つビジネスを考案していく。
プログラム運営を担当する小池主任は「参加企業が自社の技術を応用し、多様な領域で防災を『織り込む』ことが大事。現在、日本ではSDGsというと環境問題が注目されることが多いのですが、防災もSDGsの重要な目標のうちの一つ。このプログラムを通し、防災の観点が生かされた製品や技術が社会に広まっていけば」と、期待を込める。
「防災テック」を仙台から生み出し発信することで、日本や世界の災害リスクを減らしていく。そんな動きは、仙台の地域産業や起業の活性化にも結びつくはずだと、二人は確信している。
神倉課長は「仙台の地場のIT企業は約600社あると言われています。そのIT企業を軸にさまざまな防災上の課題を解決するサービスを生み出し、世界市場へ展開していくことができれば、世界の災害リスクを削減するとともに、地場産業の振興にもつながるはずです」。小池主任は「仙台は高い技術を持つIT企業が多く、その技術を受託開発にとどまらず、自社事業の創出につなげたい、という企業もあります。経済動向に大きく左右されないようにするためにも、このプログラムが独自の新規事業の創出につながればいいなと思います」と語る。
プログラム運営を担当する小池主任は「参加企業が自社の技術を応用し、多様な領域で防災を『織り込む』ことが大事。現在、日本ではSDGsというと環境問題が注目されることが多いのですが、防災もSDGsの重要な目標のうちの一つ。このプログラムを通し、防災の観点が生かされた製品や技術が社会に広まっていけば」と、期待を込める。
「防災テック」を仙台から生み出し発信することで、日本や世界の災害リスクを減らしていく。そんな動きは、仙台の地域産業や起業の活性化にも結びつくはずだと、二人は確信している。
神倉課長は「仙台の地場のIT企業は約600社あると言われています。そのIT企業を軸にさまざまな防災上の課題を解決するサービスを生み出し、世界市場へ展開していくことができれば、世界の災害リスクを削減するとともに、地場産業の振興にもつながるはずです」。小池主任は「仙台は高い技術を持つIT企業が多く、その技術を受託開発にとどまらず、自社事業の創出につなげたい、という企業もあります。経済動向に大きく左右されないようにするためにも、このプログラムが独自の新規事業の創出につながればいいなと思います」と語る。
仙台に「防災テック」が次々生まれるエコシステムをつくる
仙台市では先述のプログラムと並行し、海外企業と国内大手企業とが共同で防災に関する新規事業を開発する「Regional Business Conference 2020」も実施。東北大学災害科学国際研究所と連携し、防災に関する規格「防災ISO」を設計し、国際ルールとして広めようとする取り組みもスタートした。2021年度からはこれまで各プログラムに参加した国内外の企業や大学を巻き込み、防災分野での情報交換や事業開発のマッチングができるプラットフォームの創設も計画。オンラインから始動し、仙台市沿岸部や市有施設などの実証フィールドの提供も予定している。
仙台市が目指すのは、多様なアクターが参加することで革新的な「防災テック」が次々と生まれるような「防災テック・イノベーションエコシステム」とも言える環境を、仙台で醸成することだ。神倉課長は「千年後にまた来るであろう津波、そして世界の災害に対して、災害リスクを削減するような新しい取り組みを仙台から世界に発信していきたい。そのためには理念だけでは十分ではなく、防災を具体的な製品やサービスなどを通じて生活に織り込んでいくことが必要になります。産学官金が連携して一体で展開していくことで、百年後、千年後の災害の被害を極小化していけるように全力で頑張りたい」と意気込む。
小池主任は「防災という社会課題の解決に取り組みながら、仙台のIT企業が成長できる環境を整えていきたい。仙台市は社会起業家の育成にも力を入れていますし、『防災』とビジネスを両立させることは、今後のトレンドにもなるのではないでしょうか。防災分野に関わってくれるプレイヤーをどんどん増やしていけたらと思っているので、自社のビジネスを生み出したいと思っている企業にはぜひプログラムに参加してほしいですね」と呼びかけた。