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災害時の通信環境を確保し、速やかな食料支援につなげる NECプラットフォームズ

2021.02.24
  • NECプラットフォームズ株式会社
  • BOSAI-TECH事業創出プログラム
ハードウェアの開発・製造・販売およびICTソリューションサービスを中心に事業を展開してきたNECプラットフォームズは、ここ東北から、自社の無線通信技術を災害時に活用する新たなサービスを生み出そうとしている。社内の事業所や部署を超え、仙台のIT企業とも連携しながら、災害時の迅速な食料支援を実現するITサービスの開発と通信環境の整備に取り組んでいく考えだ。

事業所を超えて新規事業を開発するチャンスに

はやぶさ2への搭載機器の設計・製造から業務用ソフトウェアの開発まで、受託開発を中心に幅広いものづくりを展開するNECプラットフォームズ。近年ではものづくりでの強みを活かしながら、製品を活用した新規事業の開発にも力を入れている。東北でも「事業所を超えて東北で新規事業を立ち上げよう」とする社内の機運が高まり、BOSAI-TECHイノベーション創出プログラムに福島事業所の廣田卓さんと仙台事業所の根田光洋さんが参加している。

「仙台事業所では主に社会インフラ向けに通信装置を開発していますが、新規事業に取り組んでいきたいという話が出ていました。『防災』は顧客の方からもニーズの高い分野で、プログラムへの参加はこの分野での事業開発を考えるチャンスだと感じました」と、根田さん。

廣田さんは「福島事業所では無線通信システム『PASOLINK(パソリンク)』を活用した新規事業を推進していて、災害で通信インフラが途絶えた際に活用できるサービスとして展開できないかと考えていました。そこに今回のプログラムの話があったので、思いが一致し、ぜひ勉強しながら事業開発を進められたら、と考えました」と、参加動機を語る。
同社では主にハードウェアの受託設計に取り組んできた廣田さん。プログラムを振り返り、「まず事業企画ってどうしたらいいの?というところからのスタートでした」と話す。「特に印象残っているのはデザイン思考のセミナーです。一時間で企画を考え、プロトタイプまで作って発表するというもので、スピード感が全然違いました。普段とは違うエンドユーザーに近い企業さんとお話する中で、日常業務とはまた違った思考力も学ぶことができましたね」

根田さんも「参加企業の方が顧客へ提供できる価値を真剣に考えていて、いい勉強になりました。エンドユーザーの心を掴むためにはどうすればいいのか、というのを考え学ぶ機会になったと思います。それに、日常業務の中では地元仙台の企業と交流できる機会は持てなかったので、それがよかったですね」と、プログラムで得た新たな視点を話す。

独自の無線通信システムを、災害時の通信インフラ復旧に活用

同社はプログラム参加企業のプライムバリュー社とタッグを組み、コープ東北と味の素ファンデーションに向けたITサービス開発を進めている。災害発生時、コープ東北は災害協定に基づいて自治体の要請を受け、食料や飲料など多くの支援物資を供給している。一方でそのコミュニケーションは電話やFAXなどが主で、膨大な情報を処理しなければならない現場担当者に大きな負担がかかっているのが現状だ。同社はソフトウェア開発に実績のあるプライムバリュー社と手を組むことで、災害時のコミュニケーションを円滑化させるようなITサービスの開発や導入を進めようとしている。

「自治体と企業との口頭や紙でのやりとりという『入り口』をデジタル化ができれば、その先に色々な情報の引き出しを作って整理していくことができるはず」と、廣田さんは話す。電話音声やFAXの文字を認識してデータ化してくれるITサービス、さらにそのデータを自動で表計算ソフトに入力してくれるソフトウェアなど、業務を効率化し、現場で働く人々の負担を減らせるようなさまざまなITサービスの導入を検討中だ。

同社はweb上で災害時の物資の受発注や配送が完結できるようなプラットフォームを作ることも構想している。ソフトウェアの開発をプライムバリュー社が、災害時のネットワーク環境の構築をNECプラットフォームズが担う計画だ。同社は「PASOLINK(パソリンク)」という、屋外で簡単に設置・運営できる無線通信システムを独自技術として有している。これを災害時の通信インフラとして機能させることで「通信ネットワークの復旧や、緊急ルートとして活用させることができれば」と、廣田さんは構想している。
▲同社の無線通信システム「PASOLINK」を用い、NTTドコモ社が提供している富士山でのLTE通信サービス

「災害時の市民の不安をなくせるようなお手伝いができたら」

同社はこれから社内で活用できるIT技術の調査や社外へのヒアリングを通じて、サービスの精度を上げていきたい考えだ。廣田さんは「パートナー企業の課題を一気にパーフェクトに解決するのは難しいので、最低限ここはやりたいというところをヒアリングして決めていきながら、ステップを踏んで効果を体感してもらえるようにしたいですね。まずパートナー企業にサービスのよさを体感してもらい、自治体への働きかけもしていけたら。そんな広がりへの期待を持って取り組んでいきたい」と期待を込める。

「いいサービスだね、とお客さんに言ってもらえるようにしていきたい」と話す根田さん。東日本大震災の際は仙台事業所で被災し、自宅の片付けよりも先に仙台事業所にてお客様の通信機器の復旧作業にすぐに取りかかった経験がある。「東日本大震災だけでなく、あれから台風などの災害も起きています。災害時の通信環境を確保することで、安否確認や、すぐに支援が必要な物資供給がちゃんとできるように、という思いがありますね」

廣田さんは「災害時に物資供給受けるのは市民ですから、最終的な価値提供先は市民。震災のとき一時は避難所にいたのですが、人が日に日に増え、食料を調整しながら配っていたことを覚えています。迅速に必要なものが届くようになれば市民の不安はなくなるでしょうし、それが提供価値だと思っています。通信環境が途絶えた災害時に、通信ネットワークの復旧や確保を通じて、何かお手伝いができたら」と思いを語った。
NECプラットフォームズ
https://www.necplatforms.co.jp/

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