Interview
「防災×ビジネス」に挑む地元企業—仙台BOSAI-TECHで見つけた新しい可能性
2025.03.17
地元企業の防災への取り組みが加速している。仙台BOSAI-TECHのプログラムを通じて、様々なフィールドで活躍する企業・個人同士がつながり、防災ビジネスの新たな可能性を広げているのだ。今回は、プログラムの参加者にインタビューを実施。放送業界、IT業界、建設業とまったく異なる業種で、経験も異なる3名は、プログラムに参加してどんなことを感じたのだろうか?それぞれの防災に対する向き合い方が、どう変化したのか迫った。
左から門馬さん、品川さん、森さん。プログラムを通じてお互いに交流を深めている
「防災を知ること」で見えたもの—防災視点が広げた新たなビジネスの可能性
森 琢磨さん:産電工業株式会社
森さんが所属している産電工業株式会社では、仙台BOSAI-TECHのプログラムの一つ「事業化・社会実装プログラム 実証実験支援」(東北の拠点で、防災関連のソリューションの事業化に向けて取り組む企業に対して防災・減災課題への有用性を検証するプログラム)で、「高齢者見守りシステム“みぃるも”を活用した災害発生時の情報通知と避難支援要請」が採択され、実証実験を行っている。
自身も“みぃるも”を担当してきたが、「高齢者の見守りシステム」をどうやって防災に活かすのか、具体的な提案のイメージが持てなかったそうだ。
そんな森さんに大きな転機が訪れる。「仙台BOSAI-TECH Future Awards 2024 ~テクノロジーで明日を守る課題探求プログラム」への参加だ。
防災現場の課題を深く理解し、現場のニーズによりマッチした防災ソリューションを生み出すことを目指すこのプログラム。
4回にわたるワークショップにおいて自治体の防災現場の視察や参加者同士の意見交換ワークショップ等を通じて防災課題の背景や原因を探求。最終的には参加者各自が新たなビジネスアイディアを生み出し、ブラッシュアップしていく。
参加前は自分のような専門的な知識がない人間が参加していいのかという葛藤があったという。
ただ、「防災の実際の現場を見て、必要とされていること、課題になっていること知りたい」という強い思いが参加の決め手になった。
実際に参加してみてどうだったのだろうか?「やっぱりワークショップでの課題探求は大変でした」と笑いながら、こうも続けてくれた。
「それ以上に、多業種の方々からの意見を聞くことで、“みぃるもを始めとした産電工業の技術”を防災分野にどう応用できるか、具体的なイメージが湧きました。」
自身でも変化を感じているそうだ。
“みぃるも”の提案で介護施設や病院を訪問する中で、施設がどういった防災対策を行っているのか気になり、そこから先方との話が広がることもあるそう。
「クライアントや地域が抱える防災課題に対して何を提案できるのか考えるようになりましたね。」
参加に悩んでいたことが嘘のように、晴れやかな表情で語る森さん。
“みぃるも”を出発点として、地域やクライアントのためになる防災ビジネスを模索するようになった。
自身も“みぃるも”を担当してきたが、「高齢者の見守りシステム」をどうやって防災に活かすのか、具体的な提案のイメージが持てなかったそうだ。
そんな森さんに大きな転機が訪れる。「仙台BOSAI-TECH Future Awards 2024 ~テクノロジーで明日を守る課題探求プログラム」への参加だ。
防災現場の課題を深く理解し、現場のニーズによりマッチした防災ソリューションを生み出すことを目指すこのプログラム。
4回にわたるワークショップにおいて自治体の防災現場の視察や参加者同士の意見交換ワークショップ等を通じて防災課題の背景や原因を探求。最終的には参加者各自が新たなビジネスアイディアを生み出し、ブラッシュアップしていく。
参加前は自分のような専門的な知識がない人間が参加していいのかという葛藤があったという。
ただ、「防災の実際の現場を見て、必要とされていること、課題になっていること知りたい」という強い思いが参加の決め手になった。
実際に参加してみてどうだったのだろうか?「やっぱりワークショップでの課題探求は大変でした」と笑いながら、こうも続けてくれた。
「それ以上に、多業種の方々からの意見を聞くことで、“みぃるもを始めとした産電工業の技術”を防災分野にどう応用できるか、具体的なイメージが湧きました。」
自身でも変化を感じているそうだ。
“みぃるも”の提案で介護施設や病院を訪問する中で、施設がどういった防災対策を行っているのか気になり、そこから先方との話が広がることもあるそう。
「クライアントや地域が抱える防災課題に対して何を提案できるのか考えるようになりましたね。」
参加に悩んでいたことが嘘のように、晴れやかな表情で語る森さん。
“みぃるも”を出発点として、地域やクライアントのためになる防災ビジネスを模索するようになった。
森さん:Future Awards 2024 での発表の様子
「企業も行政も“本音”で語る場所」—オープンな対話が生みだす防災ビジネス
門馬 玲志さん:株式会社NTTデータ東北
実は森さんと同じ「仙台BOSAI-TECH Future Awards 2024 」に参加していた門馬さん。
公共事業部営業部に所属し、自治体向けに「防災情報システム」「防災行政無線」「センサ設備(道路の積雪・凍結・カメラ)」等の防災関連のITソリューション提案を主業務としている。
ただ、本格的に防災について学んだ期間は、意外にも短い。
「防災を意識するようになったのが1年半前。担当になってから初めて防災っていう言葉を認識したくらいです。」
手探りの状態で情報収集していくなかで、見つけたのが仙台BOSAI-TECHだ。
防災担当の営業として、自治体の防災における課題、防災関連事業、防災ソリューションを学習したいとの強い思いから、参加に迷いはなかった。
参加して驚いたのは、想像以上に「オープン」な場であったことだ。
「普段入ることができない津波避難タワー、備蓄倉庫、災害対策本部の現場視察に加え、担当職員様の設備と運用における“生の声”を聞けたことで、課題を具体的に知ることができました。ここまで行政側が本音で語ってくれるとは思っていませんでしたね。」
防災現場の「リアル(現実)」を知ったことに加え、他の企業と問題や解決策のディスカッションを行ったことで、様々な観点やアプローチ方法を知ることもでき、自社の商品だけではなく、他社や行政との協創も視野に入れて取り組むことを考えるようになった、と語ってくれた。
2025年1月30日。あるプログラムに門馬さんの姿があった。
「Open Bridge|防災現場の声を集めるソリューション発表会」
防災・減災課題をテクノロジーで解決するソリューションを企業から募集し、実際にデモンストレーションを実施。
発表終了後には、防災現場の目線からソリューションに対する評価やフィードバックを受けることができるプログラムだ。
門馬さんは登壇者として、災害時の被害現場と避難所状況を災対本部に集約し可視化するサービス『市町村災害情報報告サービス Disarepo®』 のデモンストレーションを行い、参加した自治体職員とも活発に意見交換をしていた。
仙台BOSAI-TECHが提供する、自治体や他の企業と“協創できるフィールド”が、防災ビジネスをさらに発展させていくだろう。
公共事業部営業部に所属し、自治体向けに「防災情報システム」「防災行政無線」「センサ設備(道路の積雪・凍結・カメラ)」等の防災関連のITソリューション提案を主業務としている。
ただ、本格的に防災について学んだ期間は、意外にも短い。
「防災を意識するようになったのが1年半前。担当になってから初めて防災っていう言葉を認識したくらいです。」
手探りの状態で情報収集していくなかで、見つけたのが仙台BOSAI-TECHだ。
防災担当の営業として、自治体の防災における課題、防災関連事業、防災ソリューションを学習したいとの強い思いから、参加に迷いはなかった。
参加して驚いたのは、想像以上に「オープン」な場であったことだ。
「普段入ることができない津波避難タワー、備蓄倉庫、災害対策本部の現場視察に加え、担当職員様の設備と運用における“生の声”を聞けたことで、課題を具体的に知ることができました。ここまで行政側が本音で語ってくれるとは思っていませんでしたね。」
防災現場の「リアル(現実)」を知ったことに加え、他の企業と問題や解決策のディスカッションを行ったことで、様々な観点やアプローチ方法を知ることもでき、自社の商品だけではなく、他社や行政との協創も視野に入れて取り組むことを考えるようになった、と語ってくれた。
2025年1月30日。あるプログラムに門馬さんの姿があった。
「Open Bridge|防災現場の声を集めるソリューション発表会」
防災・減災課題をテクノロジーで解決するソリューションを企業から募集し、実際にデモンストレーションを実施。
発表終了後には、防災現場の目線からソリューションに対する評価やフィードバックを受けることができるプログラムだ。
門馬さんは登壇者として、災害時の被害現場と避難所状況を災対本部に集約し可視化するサービス『市町村災害情報報告サービス Disarepo®』 のデモンストレーションを行い、参加した自治体職員とも活発に意見交換をしていた。
仙台BOSAI-TECHが提供する、自治体や他の企業と“協創できるフィールド”が、防災ビジネスをさらに発展させていくだろう。
門馬さん:Open Bridge での発表の様子
「防災をビジネスに⁉」—業界の固定観念を変えた出会いと未知なる挑戦
品川 美由紀さん:株式会社 宮城テレビ放送
放送局は災害発生時に迅速に情報を発信する責務がある。東日本大震災の際、緊急地震速報のシステムを担当していた品川さんは、発災直後に報道フロアへ向かい、設備の被害確認など、放送の継続に奔走した。
この出来事を風化させてはいけない、後世に伝えていかないといけないというメディアとしての使命。
ただ、ここに「ビジネス」が絡むと話は変わってくる。
「社内では防災というのは聖域というか、ビジネスだとか商用にしてはいけないものという感覚があった」と語ってくれた。
品川さんは現在、総合ビジネス局ビジネス戦略センターの次世代戦略担当として放送収入の枠を超えた新しいビジネスを模索している。
ただ、「検討を進める中で、新しい収入の柱としての選択肢に『防災』はなかった。」という。
そんななか、仙台BOSAI-TECHの担当者と会話する機会に恵まれた。
その時のことを品川さんは話してくれた。
「『防災でビジネスを考えていきませんか』と言われて、それが非常に衝撃的でした。会社に持ち帰った時も周囲に『防災をビジネスにしていいんだ』という話をしましたね。」
今までの固定観念が大きく変わった瞬間だった。
参加したのは「事業化・社会実装プログラム 試作開発支援」だ。
東北の拠点で、防災関連のアイディアの事業化に向けて取り組む企業に対して、試作開発を支援するプログラムで、
品川さんは「映像を活用した防災教育教材の開発」を提案。見事に採択され、試作開発に係る費用の支援も受けられることになった。
ただアイディアはあっても、どう進めていいのかわからなかったそうだ。
「開発教材を作るにあたって、やりたいことを相談するところから始めました。自分達だけでは作る術がないので、事務局の方がコーディネーターのように地域の技術力のある企業を紹介してくれました。」と感謝の念を口にしていた。
「仙台BOSAI-TECH Lounge(ラウンジ) #9.BOSAI-TECH交流会in仙台」に登壇者として参加した品川さんは開発状況を語っていた。
防災についてタブレットで学習できる教材ソフトを開発中で、仙台市内全域の小学校への展開を目指しているという。
仙台市や東北大学の有識者からアドバイスをもらいながら、実現に向けて一歩ずつ進んでいる。
「一企業だけでやろうとすると、提案して予算を取ってもらうまでのハードルってすごく高いですよね。ここなら、アイディアを形にできるチャンスが準備されていて非常に素晴らしいなと思いました。」
小学生二人の母でもある品川さん。
仙台市内の小学生が、タブレットで防災を学んでいる。そんな未来は遠くないのかもしれない。
この出来事を風化させてはいけない、後世に伝えていかないといけないというメディアとしての使命。
ただ、ここに「ビジネス」が絡むと話は変わってくる。
「社内では防災というのは聖域というか、ビジネスだとか商用にしてはいけないものという感覚があった」と語ってくれた。
品川さんは現在、総合ビジネス局ビジネス戦略センターの次世代戦略担当として放送収入の枠を超えた新しいビジネスを模索している。
ただ、「検討を進める中で、新しい収入の柱としての選択肢に『防災』はなかった。」という。
そんななか、仙台BOSAI-TECHの担当者と会話する機会に恵まれた。
その時のことを品川さんは話してくれた。
「『防災でビジネスを考えていきませんか』と言われて、それが非常に衝撃的でした。会社に持ち帰った時も周囲に『防災をビジネスにしていいんだ』という話をしましたね。」
今までの固定観念が大きく変わった瞬間だった。
参加したのは「事業化・社会実装プログラム 試作開発支援」だ。
東北の拠点で、防災関連のアイディアの事業化に向けて取り組む企業に対して、試作開発を支援するプログラムで、
品川さんは「映像を活用した防災教育教材の開発」を提案。見事に採択され、試作開発に係る費用の支援も受けられることになった。
ただアイディアはあっても、どう進めていいのかわからなかったそうだ。
「開発教材を作るにあたって、やりたいことを相談するところから始めました。自分達だけでは作る術がないので、事務局の方がコーディネーターのように地域の技術力のある企業を紹介してくれました。」と感謝の念を口にしていた。
「仙台BOSAI-TECH Lounge(ラウンジ) #9.BOSAI-TECH交流会in仙台」に登壇者として参加した品川さんは開発状況を語っていた。
防災についてタブレットで学習できる教材ソフトを開発中で、仙台市内全域の小学校への展開を目指しているという。
仙台市や東北大学の有識者からアドバイスをもらいながら、実現に向けて一歩ずつ進んでいる。
「一企業だけでやろうとすると、提案して予算を取ってもらうまでのハードルってすごく高いですよね。ここなら、アイディアを形にできるチャンスが準備されていて非常に素晴らしいなと思いました。」
小学生二人の母でもある品川さん。
仙台市内の小学生が、タブレットで防災を学んでいる。そんな未来は遠くないのかもしれない。
品川さん:交流会での講演の様子( 撮影場所:WeWork JR仙台イーストゲートビル 2F 共用エリア )
BOSAI-TECHが生み出すつながりと協創の力
「業種・経験が異なる方々と、利害を超えて素直な想いを話し合える場というところが非常に印象的で楽しかったなと、予想外だったなと。」と門馬さんは笑顔で言う。
それに同調するように森さんも「迷うくらいなら参加する価値がある」と強調してくれた。
「たしかに、企業や行政とのつながりが生まれるだけではなく、一緒に取り組みを進めていくことができるのは仙台BOSAI-TECHならではかもしれません」と品川さん。
それぞれの立場から、やりがいと今後への期待を口にする。共通しているのは防災を通じて、「地元企業として地域とのつながりをもちたい」と思っていることだ。
このような「つながり・協創する場」を提供することで、地元企業全体の盛り上がりを後押しする仙台BOSAI-TECH。
これからも防災ビジネスの新たな可能性を広げ、地域社会の安全と発展に貢献していくことだろう。
それに同調するように森さんも「迷うくらいなら参加する価値がある」と強調してくれた。
「たしかに、企業や行政とのつながりが生まれるだけではなく、一緒に取り組みを進めていくことができるのは仙台BOSAI-TECHならではかもしれません」と品川さん。
それぞれの立場から、やりがいと今後への期待を口にする。共通しているのは防災を通じて、「地元企業として地域とのつながりをもちたい」と思っていることだ。
このような「つながり・協創する場」を提供することで、地元企業全体の盛り上がりを後押しする仙台BOSAI-TECH。
これからも防災ビジネスの新たな可能性を広げ、地域社会の安全と発展に貢献していくことだろう。
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